肩関節脱臼、反復性肩関節脱臼について

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肩関節(亜)脱臼、反復性肩関節(亜)脱臼とは

肩関節脱臼

上腕骨頭が肩甲骨の受け皿(関節窩)から完全にずれている状態です。
肩関節亜脱臼 上腕骨頭が関節窩から部分的にずれ、互いの接触が一部保たれている状態です。
 スポーツなどで瞬間的または一時的に起きるが、自然に整復されるのが特徴です。
  *どちらも転んで手を着いたり、肩を激しくぶつけてしまった時に発生します。
反復性肩関節(亜)脱臼 上記が癖になり、軽微な外傷でも肩が(亜)脱臼する状態です。

ほとんどの場合、前方に(亜)脱臼します。そのため、ここからは前方(亜)脱臼、
 反復性前方(亜)脱臼に限定して説明したいと思います。
【症状】
脱 臼 
肩関節の激痛、変形、著明な運動制限があります。
亜脱臼
肩関節の強い痛みや上肢のしびれ感、しばらく腕が動かせなくなる、などがあります。
 ただし元々関節が柔らかい人がいます。こういう方の場合、鋭い痛み、鈍痛、脱力感、違和感など、
 いろいろな症状を呈します。

【外れやすく(脱臼しやすくなる)原因】

外れやすくなるのは、下関節上腕靭帯が正常に機能しなくなるためです。どうして正常に機能しなくなるかというと
・関節唇がはがれる(バンカート病変)
・関節窩が骨折する(骨性バンカート病変)
ことが原因です(図1-1)。約9割の症例でこの病変があると言われています。

横断像
側面像
(右肩)
 
バンカート病変
骨性バンカート病変

図1-1.肩がはずれやすくなる原因1

稀な病変としては
・靱帯が途中で断裂する(関節包断裂)
・靭帯が上腕骨からはがれる(HAGL病変)があります(図1-2)。
頻度は少ないですが、これらの病変が同時にあることもあります。

関節包断裂
HAGL病変

図1-2.肩がはずれやすくなる原因

【診断】

脱臼は、レントゲンで診断します。
脱臼整復後や亜脱臼後にどのような病変があるかを正確に診断するには、MRI(図2)、CT(図3、4)などを行います。

脱臼MRI

脱臼CT3

3DCT
図2.MRI像
図3.造影CT像
図4.3次元CT像
(左の肩甲骨を横から見た像)

右肩のバンカート病変。
関節唇が剥離している()。
右肩のALPSA病変(バンカート病変の亜型)。靭帯が内側()方向に落ち込んで、付着している。
骨性バンカート病変。骨片が、前方内側かつ尾側に転位している(

【治療】

脱臼時
痛み止めや麻酔をして、整復します。

初回脱臼整復後

1.
三角巾や装具を用いて固定します。
2.
スポーツ選手や若年者の場合は、反復性肩関節脱臼に移行する率が高いことが知られています。そのため、初回脱臼後に 手術を行うことも1つの選択肢となります。
3.
転位した大きな骨性バンカート病変がある場合は、手術が必要です。

反復性(亜)脱臼
完治を望むのであれば手術以外ありません。筋力を強化しても、肩を外転外旋(万歳の姿勢)すると(亜)脱臼します。(亜)脱臼を繰り返すとさらに靭帯や軟骨を損傷したり、腱板を断裂することもあります。

【手術について】
剥離や断裂した関節唇、骨、靭帯を修復します。内視鏡手術と直視下手術があります。
1.内視鏡手術(関節鏡視下手術)
内視鏡(関節鏡)で観察しながら、処置をします。
 ・傷が小さい
 ・正常組織の損傷が少ない
 ・術後の動きの制限が少ない
 ・関節包断裂やHAGL病変を正確に診断および処置できる
  などの利点があります。

2.直視下手術
従来から行われている方法です。脱臼を繰り返し関節窩に大きな骨欠損ができてしまった場合は、有効な方法と考えます。
その場合、靭帯を修復すると同時に骨移植を行います。

 

【鏡視下バンカート修復術について】

ほとんどの場合バンカート病変が原因なので、多くの症例ではバンカート修復術を行うことになります。当院では鏡視下にバンカート修復術を行っているので、その方法について詳しく説明したいと思います。現在行われている鏡視下バンカート修復術の方法として
1.シングルスーチャーアンカー法
2.ダブルアンカーフットプリントフィクセーション(DAFF)法

の2つの方法があります。

1.シングルスーチャーアンカー法によるバンカート修復術
図5
アンカーという丈夫な糸のついたクサビを骨に埋め込み 、その糸を利用して剥離した関節唇や骨を関節窩に固定します。一般的にはシングルアンカー法が行われており、良好な成績が得られております。

横断像

側面像
(右肩)
 
関節窩に吸収性アンカーを挿入して、
その糸を関節唇、靭帯の前方を回すように通す。
 
その糸を縫合する。
図5.シングルアンカー法によるバンカート修復術

2.DAFF法によるバンカート修復術図6

当院の特徴として、DAFF法も行っていることがあります。
この方法は‘厚み’のある骨片や靭帯を ‘面’で固定できます。そのため高度な手術手技を要しますが、骨片および靭帯を非常に強固に固定できる方法です。そのため、 (1)比較的大きな骨性バンカート病変、(2)手術後の再発例、(3)活動レベルの高いスポーツ選手 に最も良い適応があります。しかし、これらの方以外でも強固に固定できるメリットは同じです。そのため現在、その適応は広がっております。
(詳しい術式の選択などについては、合六医師にお聞き下さい。)

 

横断像
側面像
(右肩)
 
肩甲骨頚部にチタン製アンカー (1)を挿入して、
その糸を骨、靭帯の前方を回すように通す。
 
吸収性アンカー(2)を用いて、
通した糸を引っかけて関節窩に打ち込む。
そして、その糸を縫合する

通常2箇所にDAFF法、
1箇所にシングルアンカー法を行う。
図6.DAFF法によるバンカート修復術

 

 

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文責:札幌里塚病院 整形外科科長 合六孝広